「ITエンジニアになりたいです」
面接やキャリア相談の場で、この言葉を聞くことがあります。
では、
「なぜITエンジニアになりたいのですか?」
と聞いてみると、
「将来性がありそうだから」
「手に職をつけたいから」
「給料を上げたいから」
「在宅勤務ができそうだから」
といった答えが返ってくることがあります。
もちろん、どれも間違いではありません。
むしろ仕事を選ぶ理由として自然なものです。
ただ、未経験からITエンジニアを目指すのであれば、もう一歩だけ深く考えてほしいことがあります。
それは、
「自分はITエンジニアになることで、何を手に入れたいのか」
ということです。
ITエンジニアになることは「目的」なのか
例えば、
「ITエンジニアになりたい」
という目標があったとします。
ここで一度、
「なぜ?」
と自分に聞いてみます。
すると、
「専門的なスキルを身につけたいから」
という答えが出るかもしれません。
さらに、
「なぜ専門的なスキルを身につけたいのか?」
と考えてみます。
「今の仕事をずっと続けることに不安があるから」
さらに、
「なぜ不安なのか?」
と掘り下げてみます。
「5年後、10年後も今と同じ収入や働き方のままなのが怖いから」
ここまで考えると、最初の
「ITエンジニアになりたい」
という言葉の奥に、
「将来、自分で仕事を選べるだけの力を身につけたい」
という本当の目的が見えてくるかもしれません。
ITエンジニアになること自体は、目的ではなく手段なのです。
「なぜ」を言葉にできる人は強い
未経験からITエンジニアになる場合、最初から順調に進むとは限りません。
プログラムが思うように動かない。
何時間調べてもエラーが解決できない。
聞いたことのない専門用語が次々に出てくる。
周囲の人の成長が早く感じる。
自分には向いていないのではないかと不安になる。
こうした場面は、ほぼ確実にやってきます。
そのとき、
「なんとなくIT業界が良さそうだから」
という理由だけでは、学習を続けるのが難しくなることがあります。
一方で、
「3年後には一人で生活できるだけの専門性を身につけたい」
「将来は自分で仕事を選べる状態になりたい」
「自分でサービスを作れる人になりたい」
「地元にいながら仕事の選択肢を増やしたい」
といった自分なりの理由を持っている人は、苦しいときに戻る場所があります。
目標を言語化するというのは、きれいな志望動機を作るためだけではありません。
迷ったときの判断基準を作ることでもあります。
「エンジニアになった後」を考える
意外と見落とされるのが、
「ITエンジニアになったあと、どうなりたいのか」
という部分です。
ITエンジニアといっても、働き方やキャリアはさまざまです。
技術を極めてスペシャリストになる人もいます。
チームをまとめるリーダーやマネージャーになる人もいます。
プロジェクト全体を管理する人もいます。
お客様と話しながらシステムを考える人もいます。
フリーランスになる人もいます。
起業する人もいます。
もちろん、未経験の段階ですべてを決める必要はありません。
実際に働いてみなければ分からないこともたくさんあります。
重要なのは、
「今の時点で、自分は何を求めているのか」
を仮でもいいので考えてみることです。
「給料を上げたい」でもいい
キャリアについて考えると、
「社会に貢献したい」
「世界を変えたい」
といった立派な理由を作らなければならないと思う人もいます。
その必要はありません。
「収入を上げたい」
でも構いません。
「今の仕事より体力的な負担を減らしたい」
でも構いません。
「パソコンを使った仕事がしたい」
でも構いません。
「将来フリーランスになりたい」
でも構いません。
大切なのは、格好いい答えを作ることではなく、自分の本当の気持ちを理解することです。
ただし、そこで止まらず、もう一段掘り下げてみてください。
例えば、
「給料を上げたい」
なら、
「なぜ給料を上げたいのか?」
と考えてみる。
「生活に余裕を持ちたい」
のであれば、
「どのくらいの収入になれば余裕が生まれるのか?」
まで考える。
すると、漠然としていた希望が具体的な目標に変わっていきます。
言葉にすると、行動も変わる
例えば、
「将来の選択肢を増やすために、3年以内にWeb開発の実務経験を身につけたい」
という目標ができたとします。
すると、
「今何を学ぶべきか」
「どんな会社を選ぶべきか」
「研修だけで会社を選んでよいのか」
「実務経験を積める環境なのか」
といった判断がしやすくなります。
逆に、自分が何を求めているのか分からない状態では、
「年収が高そう」
「有名な会社だから」
「未経験歓迎と書いてあるから」
といった目の前の情報だけで会社を選んでしまうことがあります。
それでは転職できたとしても、
「思っていた仕事と違った」
ということになりかねません。
ノートに5つ書いてみる
これからITエンジニアを目指そうとしている人は、一度ノートやスマートフォンのメモを開いて、次のことを書いてみてください。
- なぜITエンジニアになりたいのか
- 今の仕事や生活で変えたいことは何か
- 3年後、どのような働き方をしていたいか
- そのためにどのような能力を身につけたいか
- ITエンジニアになることは、その目標につながっているか
最初からきれいな答えを出す必要はありません。
「まだ分からない」
という答えでも大丈夫です。
考えて、書いて、また考える。
それを繰り返すことで、自分の考えが少しずつ整理されていきます。
キャリアは途中で変わってもいい
一度決めた目標を、一生守る必要もありません。
実際にプログラミングを学んでみたら、
「開発より人と話す仕事のほうが好きだ」
と気づくかもしれません。
働いてみたら、
「技術を極めるよりマネジメントに興味がある」
と思うかもしれません。
それで構いません。
目標は、経験によって変わるものです。
大切なのは、その時々で自分自身に問い続けることです。
「自分は今、何を求めているのか」
「次にどこへ行きたいのか」
この問いを持っている人は、自分のキャリアを他人任せにしにくくなります。
エンジニアになることをゴールにしない
未経験からITエンジニアになることは、大きな挑戦です。
しかし、本当のスタートはエンジニアになったあとです。
だからこそ、
「どうすればエンジニアになれるか」
だけでなく、
「エンジニアになって、自分は何を実現したいのか」
も考えてみてください。
答えは完璧でなくて構いません。
半年後に変わっても構いません。
重要なのは、自分の人生やキャリアについて自分の言葉で考えることです。
ITスキルを学ぶことと同じくらい、
「自分は何を求めているのか」
を言葉にする力も、これからのキャリアを作るための重要なスキルです。
まずは一度、自分自身に問いかけてみてください。
「自分は、なぜITエンジニアになりたいのだろう?」
その答えが、これから学習を続ける理由になり、会社を選ぶ基準になり、将来のキャリアを考える出発点になります。


